04/11/2020

さらなる‘リアリズム’を売り手は予想している?

Are we seeing more 'realism' yet from leased aircraft sellers?

 アイルランドを拠点とするリース会社AergoCapitalは、10月に737-300型機2機を売り、2006年製 A321 (MSN 2653)は、イスラエルに上場するリース会社Global Knafaim Leasing (GKL)より取得後、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)へリースするなど忙しい月を送った。

 コロナショックによるセカンダリー市場の打撃は、レッサー間の機材取引に大きな影響を与えており、直近のAergo取引は稀な活動であると思われる。先日行われたIshkaワールドツアーイベントで、レッサーとアセットマネージャーは、機材価格売買時のスプレッドが低下していると指摘。だが、依然としてリース付き機材の売買は困難な状況が続いている。

 航空機レッサーは、売り手と買い手間で価格の折り合いがつかないため合意に至らないことが多く、夏以降の取引は‘死んでいる’状態だと不満を漏らす。

さらに、銀行は既存顧客の資金を維持するために、他顧客との付き合いが選択的になっており、多くの潜在的な買い手は、新規案件の資金を銀行から調達することに苦労している。

 しかしながら直近のAergo取引は実際に機材売買が行われていることを証明する。

弊社は前述のGKLが年初に潜在の買い手へ当該機材の売却を持ち掛けていることを認識しているが、その機材が再度市場に出回り、Aergoが取引の合意に成功。取引成立後、Volofin Capital Management (Volofin)よりAergoは、負債による資金調達を行っている。1997年製と1998年製の737-300型(MSNs 28569 and 28869) 2機は、その後Star Airへ売られた。

  同様に、エアキャップは2020年Q3の直近報告で、9機の新しい機材(A320neoファミリー8機と787-9の1機)を購入。また、所有機7機(A320ファミリー2機、737NG1機、1機の747、2機の767、1機777-200ER)を販売したと報告している。前年度は、16機を取得し、20機を販売していた。

 

名声あるエアラインへの長期リースが必要だ

 

 多くのアセットマネージャーによると、これらの取引は例外であり現在の市場標準ではないということである。旅客需要が激減し、旅行が大幅に制限されている状況では当然のことながら、どの航空会社と取引するべきかは慎重にならざるを得ない。セカンダリー市場の需要が不足している状況下でリース市場が最も懸念することは、航空会社に機材の返却を選択されることである。多くの航空会社が、大規模な機材の再編を熟考しており、貸手は機材が返却されるであろうことを予期する。したがって、多くのレッサーは、取引するために‘20ほど’のエアラインウィッシュリストをもっており、それらのエアラインは明確な政府支援がある、もしくはコロナショックに対処するのための十分な資本準備金があるエアラインとしている。またレッサーもしくはアセットマネージャーは、購入する機材において、少なくともリースの残存期間が5年はある機材の購入を望んでいる。

 前述のデジタルイベントIshkaワールドツアーに参加したリース会社の管理職は「もはや2019年ではない」。「エアラインはクレジットが全てである」ことに賛同。「リース会社が本当に関心があるのは、最長のリースと名声あるクレジットだけである」と言う。しかし、問題は、上記に該当するリース機を売りに出すリース会社がいるかどうかだ。多くのリース会社がポートフォリオでは上記のようなリース機材を中核として機能させており、極めて重要なことは、それらのリース機材は依然としてリース料の支払いが行われている。そのため、実際にはレッサー間でこのような取引は比較的少ない。しかし、アセットマネージャーによると、現金の流動性を求めるために優良な航空会社がレッサーとの間で直接行う取引は多く観測されている。


 価格の折り合い

 

 おそらく取引の最大の課題は、航空機価格の下落である。Ishkaの航空機価値は、2020年1月以降、多くの機材タイプの現在価値(Market Value)は、一定して30%から40%低下している。しかし多くの航空機の売り手は、現在の資産にそのような大幅な割引を課す準備はできておらず、損失を具体化できていない。

 数社のレッサーは、リース航空機のポートフォリオを持っている。アセットマネージャーは、ここ数カ月の取引量の少なさを考えると、レッサーは市場価格を理解するためのエクササイズとしてそれらの取引は機能していると推測する。しかし、今後活動が活発化していく兆候もあるという。またこれとは別に、ポートフォリオを持つ多くのレッサーが市場に出始めているという噂もある。

 上述で、買い手と売り手間において価格合意が難しいと記載したが、Ishkaワールドツアーイベントにおいて「価格安定化」も見られると付け足しされている。しかし、より良い航空会社のクレジットにのみ関心がある買い手によって、市場はゆがめられている部分もある。これらの取引については、「売り手からの調整と買い手からの認識があり、非常に良いクレジットを取得したい場合は、納得のいく価格を提示する必要がある。これは、コロナ以前の価格ほどではないが、それほど遠くもない」と、あるレッサーは説明する。対照的にセカンドティア、サードティアの航空会社の場合、売り手は投資家が要求する‘バーゲン価格もしくは投機的価格’への割引に応じることは、まだされていないようである。

  ある強気なアセットマネージャーは、自分たちは現状取引できる資金力はあるが、来年Q1もしくはQ2まで待てば、資金力のないプレイヤーが市場から退き、現在の競合市場は変化すると思われる、と述べている。そのため、機材購入するならばその時期を待つという。またある欧州のアセットマネージャーは、既存プレイヤーが様子見をしている一方で、新たな買い手となるプレイヤーが市場に参入しているという。その多くが米国のプライベートエクイティファンドで、彼らは経験者でもある。しかし、まだ取引は行っておらず、機会を探りながら準備を進めているようだ。

 

Ishkaの見解 

 リース付きの機材を購入する、もしくは売却をすることは、現市場では困難である。通年、年に20機ほどのまとまった機材を2回から3回売却していた大手レッサーが、その活動を大幅に縮小しており、また、さらに航空機の潜在的バイヤーが世界から大幅に消えている。そうはいっても、直近のAergoの取り引きが証明するように、まだ活動のスペースは存在する。

 多くの買い手が要求するより良いクレジットの航空会社にリースされている航空機の場合、Ishkaワールドツアー中のコメントから判断すると、売り手は価格を下げている様ではあるが、ディストレスセールではなく、これらの安定した航空会社の場合、バイヤーも取引に勝つために、かなり魅力的なオファーをしていることは明らかである。航空機の価格についてより「現実的」になっているのは売り手だけでなく、買い手も同様であるとアセットマネージャーは主張する。この産業を模索している多くの投資家は、桁外れの利回りを狙っているが、リース会社間で魅力的な航空会社に対しては未だ競争があるため、機会はまだ難しいであろうとアセットマネージャーは指摘する。

 今のところ多くの機材取引は、買い手と売り手間でスプレッドが縮小しているものの、完全には閉じておらず、資金調達が依然として困難であることから、案件を成立することは難しい。潜在的な買い手の層が少なくなることから、レッサー間では今年Q1、Q2以降の機材取引活動が容易になると広く期待されている。新規投資家は、ディストレスセールの投機的機会を待っているが、売り手がさらなる割引を躊躇っていることもあり、もう少し待つ必要があると思われる。

注:本記事は英語にて発行されており、日本語翻訳はあくまで参照です。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、英語版記事の補助的なものです。あくまで英語版が(正)となります旨、ご了承ください。

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