10/06/2021

“新EUタクソミー分類法”はグリーンアビエーションに対するリース会社の懸念事項に対処するだろうか?

Will the new EU Taxonomy for green aviation address lessors’ concerns?

注:本記事は英語にて発行されており、日本語翻訳はあくまで参照です。

この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、英語版記事の補助的なものであるため、英語版が(正)となります旨、ご了承ください。

欧州委員会による航空産業に対する持続可能投資への待望の枠組み案が、今後数カ月間以内に共有される。このフレームワークは、航空機投資をグリーンファイナンスとして視野に入れることができるか否かを、ESG投資家が情報を得るうえで、重要な役割となる。

ステークホルダー間での協議は2022年第一四半期まで続く可能性があり、また、この枠組み案は、ICAOの排出基準に沿った方法論を提議している研究の推奨に大きく影響を受けるものと予想される。リース会社含む航空産業は、この枠組み案のアプローチを支持している。

Watson Farley & Williamsのロンドンパートナー兼Jim Bell氏は、「欧州委員会は他のステークホルダーとも対話しているが、”Steer report”の発言に大きく依存すると思われる」と話す。

 

Steer Report: 提案内容

 このリポートは3月に発行されたもので、総ページ数は163ページに上る。航空の技術的スクリーニング基準(TSC)の項目を形作るため欧州委員会に提出された一連の提言書としては、最大である。リポートは、欧州委員会によって雇用された航空コンサルタント会社Steerによって作成されたもの。EU タクソミーに代表されるセクターは、独自のTSCセットが必要であり、これは、グリーンファイナンスの科学に基づく定性的および/または定量的な基準となる。ただし、航空セクターは現在、EUタクソミーのもとでTSCによって対応していない。

Steerリポートは、旅客機と貨物機を含む、EUタクソミーに含めるための4つの航空関連活動を特定している。これは、タクソミーの6つの目的の1つである気候変動の緩和が航空に最も関連していることを示唆する。Steerは、航空機の販売、リース、また運用は、技術的および経済的に実現可能な低炭素の商用飛行の代替え手段がないため、「移行活動(Transition activity)」としてEUタクソミーに含まれる資格があるはずだと主張する。

ただし、将来的には、航空機が電池、水素燃料電池、液体水素(LH2)タービンなどの「クリーンな」燃料を動力源とする場合、航空機も「低炭素」活動として認定されるべきであると報告書ではさらに追記されている。また、再生可能エネルギー(REDⅡ)に定められたアプローチに従った高度なバイオ燃料または電気燃料によるものも同様である。

ただし、今のところ、業界の焦点は既存の航空機技術にある。現在の商用航空機技術は、ゼロまたは低排出飛行をサポートしておらず、それはこの先10年もしくはそれ以上かわらない可能性が高い。そのため、航空産業に関して、「移行活動(Transition activity)」の条件を満たしていると定義することは「困難」であるとリポート内でも認めている。では、いったいどうすればいいのか。リポート内では“最先端”のアプローチを取ることを提案。つまり、“任意の時点で利用可能な最高の技術”を使用することを提案しており、技術が発展するにつれて、“許容排出量のレベル”は低下することとなる。

 

Steer Report: 方法論

2017年にICAOですでに設定されていた目標と基準に沿ったCO2の許容レベルの閾値を提案している。1994年のシカゴ条約の附属書に含まれるICAO基準は、あらゆる産業部門のCO2排出量を管理するうえで世界初のグローバル設計認証基準である。2020年からの新しい航空機タイプの設計と2023年の時点ですでに生産されている航空機タイプの設計に適用される。(これはすべての新技術での生産中航空機をカバーする)

以下の表は、ICAO CO2の新認証基準を下回る限界値から、航空機のカテゴリーごとに提案された排出の閾値をまとめたものである。 

Aircraft category

2021

2027

2037

Regional a/c

(>=20 seats)

-11%

-16%

n/a

Single aisle

 (101-220 seats)

-4%

-14%

-24%

Twin aisle

(>220 seats)

-3%

-12%

-21%

 

欧州委員会によって提案された閾値は、業界とEU間における論争の原因となる可能性がある。Aircraft Leasing Ireland(ALI)の会長であるDeclan Kelly氏は、Ishkaに強調した。「リース業界は、このトピックに関して欧州委員会に積極的に関与している。最終的なパーセンテージについては、種々様々な要求が行われると思うが、私は最終的にそこに落ち着くと思う。我々がEUタクソミーに取り組んでいることと、Steerと議論している内容間では、意見の一致もしている。基本的に、重要なのは、EUの原則を満たすソリューションの開発に積極的に関与していることだ」。

報告書はまた、大気汚染を減らす活動として、特に粒子状物質(PM)と窒素酸化物(Nox)、また航空機の騒音に関して、タクソミーに含めることを検討する必要があると述べている。

 

Steer Report: どういうものなのか?

 BellおよびHSFの両報告書は、技術的スクリーニングに関するSteerの提案が欧州委員会によってどの程度採用されるかまだ分からないと述べている。ただしステークホルダーは、委員会が報告書に記載している一般的なアプローチ、つまり基準を既存のICAO基準および目標にリンクすることから逸脱しないことを期待する。

HSFは、ICAO基準に基づいたグリーンファイナンスとリースの唯一の国際システムAWGのサポートに対し、ICAO基準に準拠することは、「航空業界に歓迎される可能性が高い」。また、AWGに助言しているBellは、タクソミーが、「もちろん、金融機関とリース会社は、ほぼ使用状況に関しては制御できないが、航空機の使用状況を考慮するのでなく、航空機のICAO認証に従うこと」にこだわっており、AWGの優先傾向だとする。

今年初めのSteerの提言書に応えた委員会の公開文書の中で、航空機の種類を3つのカテゴリーに限定することは「航空学の形勢では不適切」であるとAWGは主張した。「つまり、同じクラスに含まれるが全く異なる航空機モデル間で不適切な比較が行われる可能性があり、例えば、航空機の炭素排出量の観点からA318とA321を比較することは不公平に思われる」とBELLは記述している。

AWGはまた、航空会社やリース会社によるCO2排出量の有意義な削減をもたらすための機材再構成について議論しているが、これはただ単に新しい航空機を使用するということではなく、「環境的に持続可能である」と見なされるべきであると主張する。

 

The Ishka View

 航空機ファイナンスコミュニティは、気候変動危機における自分たちの役割精査がすすむことで、ESGと環境指標に取り組む体制を次第に整えはじめている。

航空の技術的スクリーニング基準(TSC)が最終決定されると(暫定的に2022年)、持続可能な投資に関するEUタクソミーは、ESG投資可能な航空機技術の指針フレームワークになる。業界のステークホルダーは、ヨーロッパの標準ではなく、単一のグローバル標準を好むが、航空機ファイナンス部門にとってその重要性を誇張しているのではなく、タクソミーは、世界の他の地域でも同様の規制を導く可能性がある。

航空、特に航空機資産を取り巻く複雑さが、このセクターのESG政策枠組みにおいて、他のセクターに遅れをとっている理由の一部である。実際、委員会による航空機技術のスクリーニング基準(TSC)のフレームワークは、今月予定されていたが、2,3カ月遅れており、2022年の初頭までに決定的な提案は難しそうである。フレームワークが共有され、委員会がSteerの方法論を採用した場合、ESGの観点から、特定の航空機タイプが投資可能もしくは不可能になる可能性があるため、提案された航空機排出量の閾値を、ステークホルダーは注意深く精査することが期待される。ICAO基準が最終的な方法論として使用される可能性が高いことを喜ぶ関係者は、ALI's Kelly含み多いであろう。

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